人気ブログランキング | 話題のタグを見る

映画/『最後の忠臣蔵』

映画/『最後の忠臣蔵』_c0184546_2261456.jpg普段ほとんど見ることのないジャンルですが、劇場予告に惹かれて見に行ってきました。

見て良かった。泣きました。後半、何度泣いたことか。久しぶりに邦画で見終わった後、気分の良い作品でした。
ド派手なアクションがあるわけでもなく(ベテランによる殺陣シーンはありますが)、はい、ここ泣くところですよー。感動するところですよー。と、用意された場面は特にないんだけど、泣けるんですよ、これが。武士魂というかサムライ魂というか。凝った演出の見せ場があるってわけじゃなくて全体を通して泣ける。
ラストシーンを、「うん、きっとそうするだろうね。ていうか、それしかないよね。だって武士だから」と思えるのはやっぱり自分が日本人だからなんでしょうか。

人様の話を聞きかじりしただけなんですが。この作品はアメリカのワーナー・ブラザーズが手掛ける邦画だそうで、エンドクレジットに製作総指揮に外国人の名前が出てきます。なんか不思議。
邦画の脚本は通常1人(複数の場合もありますが)が担当していますが、これはハリウッド式に10人単位で検討して出来上がった脚本だそうで、だから深いストーリーに仕上がっている、みたいなこと言ってました。なるほどー。てか、ハリウッドだって内容の薄い多い作品は多々ありますけどね(^^;)
ということで、アメリカでの大規模な配給が決定してるらしいのですが、見ていてこの作品を果たして外国人は理解出来るのか…?というのが常に頭の片隅にありました。

例えば、日本人は言葉の遣いわけ(敬語とか方言)で、ある程度の人物像が理解できたりしますが、表現が少ない英語で果たして伝えることが出来るのか?とか、この人物のこの選択を理解できるのか?とか、この精神を外国人は理解できるのか?とか。ワタシ、外国人ナメてますか?

物語は、吉良邸討ち入り後、大石蔵之助から討ち入りの様子を赤穂浪士の家族や後世に伝える役目を言い渡された吉衛門(佐藤浩一)は全国に散らばった浪士の家族を尋ね歩き、16年の歳月をかけてようやくその役目を果たし終える。その後、赤穂浪士の17回忌が行われる京へと向かう途中、討ち入り前日に姿を消した孫左衛門の姿を見かける。孫左は吉衛門の親友であり、3代に渡り大石家に仕えた身。命惜しさに逃亡したとは到底思えず、ずっと彼の行動に疑問を抱いていた。
一方、孫左はある少女(可音)と一緒に16年、竹やぶ奥の住まいでひっそりと暮らしていた。やがて孫左と少女の存在を吉衛門が知ることとなり、少女の素性が明らかになる…なお話。超ざっくり(笑)

吉衛門は公に役目を仰せつかり、むしろ生きることが使命。ところが孫左は生き延びている理由は謎のまま。孫左がなんのために討ち入り前日に逃亡して16年間生きてきたか…?なところがポイント。たぶん。(おい!)



※ここから先はネタバレありです。ご注意を。

そこに可音を見初めた超裕福な商人の息子と父親、可音の初恋、孫左と可音を16年見守って来た女性などが絡んできます。

メインに描かれているのは孫左と可音の父娘ともちょっと違う微妙な関係の人間ドラマですかね。
16年間前、それぞれ主君に重要な役目を言い渡され、仲間と共に勇士として仲間と死ぬことを許されなかった2人の男の生き様とその結果が対照的。武士としてこんなにツライことはないんだろうけど、生き続けることが彼らにとっての使命であり、主君に対する忠誠の証。

人が死ぬ=だから悲しい、というのは当たり前なんだけど、目に見える事実だけでなく、その人の死に対して何を思うか。キャラクターが色濃く描かれることによって、その人の生き様が哀しくて泣けてくる。
その他にも、それが良いか悪いかは別として、その選択をせざるをえない状況など様々な要素があって、その決断に至るまでの気持ちとかを考えると泣けてくるんですよね。その時の心情とかね。淡々と物語が流れる中で、それらがしっかりと描かれていた作品だと思います。

個人的には、役所さん演じる孫左と一緒に暮らしている可音を演じている若い女優さんが良かったです。役所さんとのやり取りでは、無茶なワガママを言ったり甘えたりして孫左を困らせ少女らしい幼さが可愛らしいのですが、外に出ると武家の子女としての振る舞いに凛とした美しさと気品があるんですよね。出番も多く、時代劇で言葉遣いや所作も難しいでしょうに、すごく自然にそこにいて、若いのにすごいなーと思いました。
劇中とある男性に見初められるシーンがあるのですが、たしかにそれだけの魅力があり光っていました。説得力のあるシーンでした。

印象的だったのは、散々ごねて孫左を困らせて手を焼いていたのに、ある晩ぽつりと「自分の体は自分のものであって自分のものではない…」と呟く場面。その直後の彼女の決断に至るまでの気持ちが現れているような気がします。自分の気持ちのままに生きられたらいいのにね…。

彼女は自分の生い立ち(存在)を認識して、自分がどう振舞うことが良いことなのか。自分の幸せだけを願う自分の大切な人にとって何が幸せなのかを考え、大切な人の言う「使命」というのも理解したんじゃないかと。
またその告げ方が凛としてて、それぞれ相手を想う心を胸の奥に仕舞いこむ切ない場面であるはずなのに、2人にとって1番幸せな瞬間だったように思います。良い娘に育ったよね…。いや、そう育てたのか。彼女を見てると孫左は身分を隠してはいても武士だったんだな~と思います。

ただ、物語を少女がお気に入りの浄瑠璃になぞらえていて、心中ものの浄瑠璃が度々出てくるのですが、そもそも見たことないワタシにはまったく馴染めず、むしろ分かりにくいわ!と思ったりでした(^^;)それだけが気になった。
あと最後の場面でわらわらと集まってくる関係者達に「もういいだろう!」と笑ってしまいました。そこ笑うとこじゃない。

by norarican | 2010-12-28 22:21 | 映画