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映画/『ザ・タウン』

映画/『ザ・タウン』_c0184546_0333828.jpgベン・アフレック監督・脚本・主演作。親友ジェムを演じるジェレミー・レナーはオスカーの助演男優賞にノミネートされているそうです。

ボストンで1番銀行強盗発生率の高い街“チャールズタウン”で生まれ育ったダグは、兄弟同然に育った親友ジェムを含む仲間4人で銀行強盗を生業としていた。
ある日、誰も傷つけず金だけ奪う方法で綿密な計画を立てて銀行を襲撃した際、警報ベルを鳴らされてしまい、万が一の保険として支店長のクレアを人質に逃走。難なく逃れられたダグ達はクレアを解放するが、ジェムが奪ったIDから彼女が近所に住んでいることが分かる。
必要があればクレアを殺すと息巻くジェムを抑え、ダグは様子を探るためクレアを監視する。ところが、ひょんなことから何も知らないクレアから声を掛けられ、2人は惹かれあう…。

事件前から薬も酒もやめて人生を変えたいと思っていたダグはクレアと出会いその思いを強めるが、仲間を見捨てられず、また街の元締め的存在も彼が抜けることを許さず、ダグは葛藤する。その間にも事態は刻一刻と進み、やがてFBIの捜査の手がダグの周辺に及び始める…なお話です。

結末がどうなるのかが気になって見に行ったのですが、ワタシ、これ好きです。すごい良かった。
ストーリーがすごく骨太で芯がしっかりしてて、小説を読んでるみたいな感覚でした。ページを1枚1枚めくる度に引き込まれていくように、話が進むにつれグイグイ引きこまれていくみたいな。

ドラッグ密売などの犯罪が日常化している土地に生まれ、銀行強盗が稼業のような荒んだ環境から抜け出そうとする男が恋と仲間の狭間で葛藤する……というと一見重そうなイメージですが、全然重くなくて自然と世界に入り込めました。こんなに没頭して見れる映画だとは思わなかったよ。見終わった後、すごい満足感というか充実感がありました。

人生を変えたいと願い、秘密を抱えたまま恋に落ちてしまったダグの心情を静かに描きつつ、スリリングでリアリティのある白昼堂々の銀行強盗やカーチェイス&銃撃戦、徐々に身辺に迫るFBI捜査官などのドキドキハラハラが飽きさせないレベルで絶妙に配置されてて、完全に見入っちゃってました。

脚本や演出が良いのはもちろん、ベン・アフレックの演技も良かったんだと思います。小説には“行間を読む”というのがあるように、彼の演技でダグの心情を読む、みたいなことがなされていたんじゃないかと思うんですよね。観客それぞれの視点で感じる余白があるというか幅があるというか。最小限の説明だけで、作り手の「これはこういうことなのよ」「こう見て欲しいのよ」というような押し付け感がなかった気がする。
なので、見てる側は自分の中で設定に対する想像ができて、より感情移入しやすくなる…ていうのは妄想癖のあるワタシだけかもしれませんけど(^^;)。この辺が小説読んでるみたいな感覚を引き起こしたのかもしれない。登場人物達の会話のやり取りや言動などで関係性を理解して、自分が感じたままで見れるんですよね。



仲間や街とのしがらみ、父親との確執、母親の真実、クレアとの恋、執拗に追ってくるFBI捜査官との対決などがありますが、あくまでもダグを中心に描いてて、メイン以外のキャラ描写を最小限に抑えていたので視点が分散されず集中できたのかも。
言い換えれば説明が足りないということで、それが少々あっさり気味に思えて地味というか淡々として見えてしまうんですが、ワタシには合ってました。

ダグは監視目的でクレアに近づいたけど、図らずも人質にして怖い思いをさせてしまったクレアのことが気になっていたのもあるし、荒っぽいジェムが彼女を殺すと息巻いていたことも心配だったと思うんですよね。だから、彼女から声を掛けられた時、そのまま立ち去れば良かったのに、見て見ぬフリが出来ずに話を続けてしまったんじゃないかと。

そして、クレアとのデート中に偶然通りかかったジェムが乱入し、クレアに自分の正体がバレないか。クレアが見たという犯人=ジェムのタトゥーに気付くんじゃないか。そして、ジェムにクレアに対する感情がバレないか。それぞれに対する思惑をダグが抱える場面は緊張感が漂っていて、なんとかジェムを追い払えないものかと、すごいハラハラしました。

ダグ達4人が行う銀行強盗が次第に難しくなっていくのも面白い。最初はスムーズに手際よく(ミスはあるけど)、次は準備不足で不安を感じていたら予感的中でFBIに追い掛けられる。最後は計画は完璧だったけどFBIに取り囲まれて絶体絶命。不測の事態がある方がリアリティがあるし、惹きつけられる。

街のボスに脅され渋々仕事を引き受けたらFBIに取り囲まれて追い詰められてしまったり、それが元カノの嫉妬からくる密告だったりで、結局ダグの足を引っ張るのは“タウン”で、彼は“タウン”から逃れることはできないってことなんですよね…。

ジェムは荒っぽい性分だけど仲間意識が強くて、1人だけ街を出ようとするダグに対して怒りを露わにするんですが、心の中では自分を変えるために実行しているダグを羨ましくもあり、そんな彼に見捨てられるような気がして寂しく思う部分もあったんじゃないかなー。逆の選択をしたのはダグに対する意地もあったんじゃないかなー。なんて思ったり。
ダグとクレアの関係に気付いてクレアにダグの正体をバラしてしまう、一味の逮捕に執念を燃やすFBI捜査官は物語のスパイス的存在ですね。

ラストは若干アメリカらしいといえばらしい感じでしたが、それぞれが選んだ道の結末なのでしょう。ダグは、仲間を選ぶか恋を選ぶかで悩んでいたけど、結局すべてを失い得られたのは自由という名の孤独で、でもそうまでしなければ抜け出せないほどダグを縛り付けていた“タウン”の鎖は強靭なものだったのかも!?

クレアに送ったメッセージの中で、父親に言われた言葉を用いた、「いつか“ここ”か“あの世”で会えるだろう」(←若干うろ覚え^^;)て言葉が印象的でした。

by norarican | 2011-02-22 23:50 | 映画