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映画/『モールス』

映画/『モールス』_c0184546_1145391.jpgスウェーデン映画「ぼくのエリ 200歳の少女」のリメイク版。「キック・アス」のクロエ・グレース・モレッツちゃんが謎めいた少女を演じてます。

イノセント・スリラー(ホラー?)というだけあって純粋で儚くて無垢で残酷で切ない物語でした。
映像もそうなんですが、人物描写など作品全体から受ける印象が“美しい”。真っ白な雪と肌に真っ赤な鮮血、オレンジ色の光など色のコントラストが綺麗でとても印象的だった。雪深い町の風景が、より2人の純粋さを印象付けていたように思う。

ミステリーやホラーな描写もありつつ、メインはオーウェンとアビーの幼い少年少女のピュアで残酷な恋物語。残虐描写も多少ありますが、ワタシは見れるレベルでした。美しい静寂の中に存在する残虐描写が不思議と浮いてなくて、むしろマッチしてるように見えてしまったのは、ある意味すごい。

雪に覆われた田舎の町に住むオーウェンは両親が離婚し母親と2人暮し。学校では毎日いじめられ孤独な日々を送っていた。
ある日、いつものように1人で窓から外を覗いていると、雪の上を裸足で歩く少女を見かける。オーウェンは父親らしき男性と隣に越してきた少女アビーに興味を抱く。初めはオーウェンを遠ざけていたアビーだったが、2人は次第に言葉を交わすようになり、壁越しにモースル信号で交流し始め、絆を深めていく。
その頃、町の周辺で猟奇的殺人事件が発生していた。やがて事件を追う刑事が2人の住むアパートへとやってくる……なお話。

一応、アビーの正体や時折壁越しに聞こえてくる罵声、父親らしき男性とアビーの関係は謎の部分なんだと思いますが、結構早い段階でのタネ明かしや見てるうちに想像ついたりするので、たぶんそれほど重要じゃないのかなと思うところです。まあ、見る前からうすうす気付く人は気付くでしょうが。



個人的に印象に残ったのは、オーウェンがアビーの正体に気付いた後、アビーがオーウェンの家を訪ねるシーン。
ドアを開けて待つオーウェンに、アビーは招き入れてくれるように頼むのですが、オーウェンは「言わなかったらどうなるの?」と問いかけ、アビーは答えずオーウェンの家に入ります。すると、彼女は体を震わせ全身から血を流し始め、オーウェンは慌ててアビーを招く言葉を言うんですが…。なぜかこのシーンで泣きました(笑)。

いやね、自分がそうなると分かっててオーウェンの家に入ったアビーは覚悟してたと思うし、オーウェンに対して自分をさらけ出して真摯に向き合おうとしてたんじゃないかと思うんですよね。でも、オーウェンはそんなアビーの気持ちはつゆ知らず、好奇心半分、ちょっとした意地悪半分の軽い気持ちで、まさかそんなことになるなんて思ってなくて、あの一瞬で激しく後悔したんじゃないかな~と。
子供なりに受け入れてもらおう、受け入れようとしている姿に泣けてきちゃって。2人の関係は恋心と呼ぶには幼い感情で、可愛らしいほのぼのとしたものではないんだけど、どこまでも純真なところがまた泣けちゃってね。胸が痛かったです。変ですか?変ですよね(笑)。感情移入し過ぎ。

オーウェンの決断は、今後の彼の人生を大きく左右することになるわけで、彼は事の重大さにまだ気付いてないと思う。いや、なんとなくは分かっているんだろうけど、本当の意味で理解してないんじゃないかと。子供だから当たり前だけど(^^;)。でも、12歳のオーウェンにとっては自分の身の回りのごくごく小さな世界で起こることがすべてで、善悪の境界線が世の中とは違っていたり、道理から外れていたり、人として間違った行為、存在だとしても、彼にとってのアビーは最大の味方であり1番身近な存在であり“善”なんじゃないかなー。ていうのは、12歳という年齢だからこそ成立する気がする。

哀しくて切ないのに、どこか安堵するラストに思えたのは、きっとアビーと一緒にいた男性が最後までアビーを守っていたからかも。彼もまた純粋なり。
アビーは永遠に年を取ることがなく、そばにいる人間がどんどん老いて自分を残して逝ってしまう孤独な存在で、オーウェンは両親が離婚調停中で生活に疲れ宗教にのめりこむ母親、オーウェンに関心の薄い父親、友達もいなく同級生のえげつないいじめなどでやはり孤独感を抱えていて、孤独な者同士、強く惹かれあうのも当然かもしれない。

大昔のアビーの写真が出てきたり、1人で窓の外を眺め部屋の中で強い自分を妄想するオーウェンだったり、ワンカット、ワンシーンで彼らの境遇を表現していて、彼らがいかに孤独を抱えているかが見ていて伝わってくるんですよね。描き方が上手いなーと思ったりです。妄想癖のあるワタシは、こういう場面の中で様々な感情を想像できる作品、好きです。

オーウェンに裸足や服装を指摘されてお洒落してみるアビーが可愛かったー。食べれないものを無理して食べたりとか。透明感のあるクロエちゃんも良かったけど、オーウェン役の子も可愛くて無垢で儚げなところが良かった。

オリジナルはまだ未鑑賞ですが、いつか見るつもりです。あちらはもう少し濃厚そう。だって北欧だし。(←勝手な思い込みです)

by norarican | 2011-08-25 01:42 | 映画